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常磐線大野駅。9年ぶりの、改札。

新しい駅は、なんだかすがすがしい。

常磐線大野駅、東日本大震災の影響で9年間利用ができなかった駅だ。

仙台と東京をむすぶ常磐線は、太平洋沿岸を通り鉄路として活躍してきたが、震災による原発事故のため、一部の区間では全住民が避難せざるを得ず、しばらくは利用ができなかった。2020年、全線で復旧し、駅舎の整備もされた。本数が少ないこともあるが、利用する人の姿はまばらだ。

改札をでると、ガチャガチャがある!常磐線と大熊町のキャラクター「まあちゃん」のシリーズだ。常磐線は車体のカラーが白地に赤・青・緑・黄・オレンジの5色いずれかがあしらわれ、「今日は何色の車両がくるかな」と楽しみにしていた。その、それぞれの色の車両とにこやかなまあちゃんがあしらわれているキーホルダー。いやー、青い車両のキーホルダーがほしいなぁと思ってまわすと、大野駅限定版がでてきた。あれ、車両が・・・ない。まあちゃんと駅長の姿の特別版だ。車両のキーホルダーがよかったけど、特別版だから、まぁいいかな。

駅舎をでると、大きな交流施設がある。広い芝生のスペースもあるが、駅前にはそれしかない。大熊町は、震災のあと全町避難を余儀なくされ、戻って町づくりを始めるときに、スピード感をもって対応しよう、と。そのために、再開が遅れていた駅舎のまわりを後にして、駅から少し離れたところで避難指示が解除になった場所に役所と交流施設をつくったのだ。駅前の交流施設の建物は、役所再建のあとに建てられたが、とても立派なものである。「CREVAおおくま」と名付けられている。

CREVAおおくまは、3階建てで、1階にはゆったりとした交流スペースと環境省の施設「中間貯蔵事業情報センター」がある。2階は事業者が入居するスペースと、個人でも自由に使えるコワーキングスペースがある。3階は周辺を見渡せるデッキになっている。天気もよいので、デッキでパソコンを広げる。…静かだなあ。

大野駅のある大熊町の人口は、住民票上では約9,700人(令和8年6月現在)、しかし、実際に居住している人は1,200人あまりだそうだ。そして、住宅地は駅から少し離れているとなると、駅の周辺にひとが集まることは少ないのだなあ。東日本大震災のあと、この地域の皆さんは、全町避難ということで、とにかく原発から離れるという選択をせざるを得なかった。当時、中学生だったという女性に話を聞く機会があった。状況がよくわからなかったが、とにかくバスに乗ってと言われ、家族でバスに乗ったという。全町避難が解除となり、少しずつ町に戻れる状況になったが、彼女の自宅がある場所はまだ避難指示が解除されていないという。生まれ育った町で生活をしたいし仕事をしたい、でもなかなかその環境がかなわない。せめて近くまで戻ってきたいと考え、隣町で仕事をしている。

彼女のように、戻りたいが戻れない、というひとが多いのかな。かつて、大熊町には小学校が2つと中学校が1つあり、避難先の会津若松市で3校が統合する形で学校が再開された。2023年に町での教育が再開となり、「学び舎 ゆめの森」という学校ができた。教室の仕切りがなく、自由な雰囲気のつくりになっている。シラバスが決められているというよりも、生徒自身がなにをやりたいか考えて勉強を進めるということで、この新しい教育方法に賛同して、この学校に通うために引っ越してくる家族もいらっしゃるそうだ。逆に、避難先で生活のペースが確立してしまっている住民の皆さんにとっては、町の施設や機能が充実されてきたとはいえ、避難先での生活(仕事や教育環境など)から、再び変化をさせることも難しいようだ。東日本大震災を経験した東北の住民でも、住んでいた地域によって大きく状況が違っていると実感する。

自分には、なにかできるのだろうか。いつもそう思って、なかなかできずにいる。

CREVAおおくまに隣接して「クマSUNテラス」という商業施設がある。飲食店、物販店と交流スペースがある。お気に入りは「十川食堂」だ。中でも、麻婆豆腐と唐揚げ。麻婆ラーメンを食べて唐揚げを持ち帰りにしたり、担々麺を食べて麻婆豆腐を持ち帰りにしたり…本格的に辛くて、花椒がきいていて私の好み。でも、最近は、冷やし担々麺がイチオシ。辛いモノ好きにはたまらないスープの赤い海…これは、冬でも食べたい。お店の定休日は週に1日あるけれど、それ以外は毎日営業。11時にお店を開けたら、21時まで通しで営業。私たちは助かるけれど、大変だよなぁ。いつ行っても元気な店主のお母さん、その笑顔に応援したくなる気持ちが湧いてくる。

あまりたいしたことはできないが、とにかくこの地域を見つめていきたいと思う。地域全体は今どうなっているかな、新しい取り組みはなにかあるのかな、十川食堂のお母さん元気かな、新しいメニューに入れ替わったかな、まあちゃんのキーホルダーガチャは補充されているかな。なんてことはないけれど、ずっと気にしているのは、誰か好きなひとができて恋焦がれていることと似ているかも。

次は、いつ来ようかな。

取材班・稲葉

※文中の常磐線の5色カラーは、かつての特急「フレッシュひたち」(E653系)を再現したE657系のリバイバル塗装で、2026年春に運行を終了しました。

あわせて読みたい:
常磐の風に吹かれて――昭和ノスタルジーの深淵へ(前編)

関連リンク

大熊町ホームページ(令和8年6月末現在の人口・世帯状況及び居住・避難状況)

CREVAおおくま/クマSUNテラス(大野駅西交流エリア)

大熊町立 学び舎 ゆめの森

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