地域が今刻む足音、足跡、そして放つ光や音の断片をすくい上げる「東北ROUTE66」。我らが「俺の温泉同好会」が今回ハンドルを握ったのは、宮城県角田市から国道349号線をぐっと南下するルートだ。目指すは福島県川俣町、そしてそのすぐ隣に位置する飯野町である。
ただの温泉旅ではない。昭和を生き、土地の「熱」を知る大人たちに捧げる、胃袋から宇宙までが地続きになったロードトリップの記録だ。
ユーザー目線の名店「あじせん楓亭」で、つゆだく親子丼に溺れる

午前11時過ぎ、開店間もない福島県川俣町の「あじせん楓亭」に滑り込む。すでに先客が3組。この時点で名店の空気が漂っている。
お目当ては、もちろんこの地が誇る名物・川俣シャモだ。私は「川俣シャモのぶっかけ親子丼と塩ラーメンの定食」をオーダー。連れは「オールシャモラーメン」、もう一人は「ぶっかけ親子丼」。さらに欲が出て、メニューにあった「握り寿司」まで欲張ってしまった。

運ばれてきた親子丼には、専用のレンゲが添えられている。すくい上げて驚いた。ほぼ雑炊かおじや、と言いたくなるほどの圧倒的な「つゆだく」状態なのだ。しかしこれが、芳香でたまらない。トロリとした卵を纏った川俣シャモの肉は、程よい弾力と強い旨味を放ち、つゆと共に最後の一口まで一気にレンゲを進ませる。そこに透き通った塩ラーメンの優しさが、見事なまでにマッチする。連れもオールシャモラーメンを「うまい、うまい」とあっという間に完食し、合間につまむ握り寿司が絶妙なアクセントを添えてくれた。
川俣シャモ一色で押し通すのではなく、地場産の牛系メニューがあったり、とんかつがあったり、我々が頼んだような寿司まである。そのあいだにも、次々と新しい客が扉を開けていった。

「おー、荒井さんだ!」公営施設が放つ圧倒的な昭和オカルトの熱量
満腹の胃袋を抱え、次なる目的地「UFOふれあい館」へ向かう。川俣から飯野町はすぐそこだ。街道沿いの看板を目印に山を登っていくと、ほぼ山頂に近い位置にそれはあった。

まず駐車場に車を停めると、絶景の手前に「UFO物産館」が目に入る。天気にも恵まれ、青空が心地いい。「W地鶏ラーメン」の木製看板や「宇宙人大図鑑」のポスターに、どこかモヤモヤとした隠しきれないB級スポットの気配(失礼!)を感じつつ、まずはそこから階段を10メートルほど上がった処にある「UFOふれあい館」の入り口へ向かう。その途中の散策路の名は「UFO道(ゆうほどう)」。遊歩道とかけた徹底的なコミカルさが、たまらなく愛おしい。

いざ、入り口へ。圧倒的なUFO感の中、宇宙人のモニュメントが我々を迎える。驚くべきは、ここが「公営」だということだ。しかも入場料400円を払えば、2階のお風呂にも入れるというからお得すぎる。

館内に入ってすぐ、私の足が止まった。正面に掲げられていたのは、UFO研究のパイオニア・荒井欣一さんの紹介ポスターだ。 「おー、荒井さんだ!」 昭和のオカルト少年だった私が思わず感嘆の声を漏らすと、すかさず事務方の研究員の方が出てこられた。
「荒井先生をご存じですか?」 「ええ。知ってるも何も、こんな有名な方がここに……」
聞けば、ここに収蔵されている膨大な図書や資料は、すべて荒井さんの貴重な寄贈物なのだそうだ。ただのハコモノではない、本物の情熱の地層がここにあるのだ。


どこかお化け屋敷に入るような、ゾクゾクする心持ちで進む展示室。そこに漂う半端ない「昭和感」は、我々昭和の子供にとっては最高の大好物だ。さらに、我らが「月刊ムー」の足跡(爪痕?)もバッチリ刻まれている。なんとムーの全面協力によって「国際未確認飛行物体研究所」が開設されているのだという。最後は3D映像シアターでこの千貫森(せんがんもり)という山の不思議に触れ、すっかり腹落ちして展示室を後にした。

ステンレスの湯船に安達太良連峰。宇宙(コスモ)を感じる貸切風呂
さて、お目当ての2階のお風呂へ向かう。 ガラリと扉を開けると、先客は無し。ラッキーなことに、俺一人の貸切状態だ。

広々とした銭湯のような浴場に足を踏み入れて、にやりとした。湯船が「ステンレス」なのだ。このメタリックな質感が、なんともUFOっぽくて世界観にハマっている。 窓の外に目を向ければ、青空に萌える緑、そして遠くには安達太良連峰の絶景が広がっている。
お湯に体を沈める。柔らかくて素晴らしいお湯だ。先客がいなかったせいか、ちょっぴり熱めの湯加減が、私にとってはこれ以上ないほど丁度いい。 窓外の絶景をお湯と共に味わう、この至福の瞬間。 「極楽、極楽。コスモ、コスモ……」 思わずそんな言葉が口から漏れ出てしまう。

湯上がりは、隣の大広間休憩室へ。ここも誰もいない贅沢な空間だ。クーラーがキンキンに効いていて、クールダウンにはもってこいである。 心地よさに抗えず、畳の上に大の字に寝転がる。一体いつぶりだろうか、畳の上で大の字になるなんて。最高である。窓の外の眺めもまた素晴らしい。

ふと、寝転がったまま畳の目を眺めていて、ハッとした。 畳の「縁(へり)」に、UFOの柄がしっかりと刺繍されている……!
「ここまでやるか。やるな、飯野町」 その細部への異常なこだわりと地域独自の熱量に、完全に脱帽した。まさに最高のUFO湯上がりだ。
帰りがけ、下の物産館で「UFOネクタイ」とステッカーを購入。物産館のこだわりが詰まったUFO食堂メニュー群(あの木製看板のW地鶏ラーメンも!)に、とてつもなく後ろ髪を引かれながら、「これは次回の楽しみにしよう」と心に決めて山を降りた。
国道349号線を走るこの旅には、土地の確かな旨味と、先人たちの剥き出しのロマン、そして旅人を全裸で癒やす最高の湯があった。飯野町を降りながら、次はいつ来ようかと、もう考えていた。
文・プロデューサー/小林


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