横丁の錆びついた看板の向こうから響いてくる、かつての狂気的な繁栄の地鳴り。その圧倒的な余韻を腹に抱えたまま、私たちは黒石駅前へと向かった。
五月十二日。この日の津軽は、半袖でちょうどいいほどの夏日だった。乾いた太陽の光が降り注ぐ駅前の角地に、ポツンと佇む一軒の古い食堂がある。
「すごう食堂」
白い暖簾の傍らには、大書された“津軽百年食堂──つゆ焼きそば”の看板。映画のモデルにもなったというその佇まいは、実に趣深い二階建ての木造建築だ。一階の青いトタンの庇(ひさし)が、中央に向かってなだらかなアールを描いて湾曲している。冬、出入り口に雪がドスンと落ちてこないように設計されたのだろうか。豪雪地帯である青森ならではの、生活の知恵が刻まれた独特の建築様式に、思わず目が留まる。
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