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「カウンターの向こうで、思い出した顔」

先日、我が町にかつて戦闘機乗りがいたという話を知った。
靖国に眠る英霊の手記を拝見し、不覚にも涙してしまった。
年を取ると涙腺が緩むというが、どうやら本当らしい。

折しも現政権は解散総選挙だとかで、世の中がにわかに慌ただしい。
国政に国際情勢、気候変動まで加わって、不安材料は年々増える一方だ。
嘆いたところで腹は膨れない。
せめて目だけは凝らして、選択していこうと思う。

そんなことを考えていた矢先、
ふいに福島から通ってくる馴染みの顔が浮かんだ。

年のころは三十手前。
がっちりした体格に眼鏡をかけ、見た目はどう見てもジャイアンだ。
本人もそれを自覚しているらしく、ジャイアンのトレーナーなどを平気で着ている。

しかし、このジャイアン、意外にも気が優しい。
しかも芯がある。
こういうことは、少し話せばすぐに分かる。
仮に、この馴染み客をS君としておこう。

S君は、震災で爆発した原発の廃炉作業、その最前線で働く現場監督だという。
大学院で放射線を研究し、卒業後にそこへ就職したそうだ。

「S君の仕事も大変だねぇ」と声を掛けると、
「そうなんですよぉ。うまくいっても、いかなくても、どのみちご批判は頂きますから」と笑った。
「そうだよなぁ」と相づちを打つと、
「でも、誰かがやらなくちゃいけませんからね。お国のために頑張ります」

……これが、今どきの二十代の言葉か。
私はしばらく、返す言葉を失った。

S君は、国体というやつを、知らず知らずのうちに背負っているのだろう。
では、震災のとき、彼はいくつだったのだろうか。
すべてが人類にとって初めての作業。
実験と実施が同時に進む世界で、放射線も浴びる。
楽な話など一つもない。大変なことしかないはずだ。

先ほど拝見した英霊の手記と、S君の背中が、ふと重なった。
私は思わず目頭が熱くなるのを覚えた。
おじさんは、いつも君を応援しているぞ。
いや、心は常に共にある。ここに誓っておく。

そんなS君が、昨日も笑顔で来店し、そのまま宿泊した。
会社の後輩だという子分を引き連れ、四人でご馳走と酒を平らげる様は、さながら大食い選手権である。
翌朝はゲストハウスの朝食をたいらげ、昼には冷たい肉そばとメンチカツカレーをきっちり決めて、満足そうに帰っていった。

余談だが、先日、鈴鹿サーキットで軽自動車のギネス挑戦イベントがあったそうだ。
S君はそれにも参加し、見事ギネス達成。
まったく、どこにそんなエネルギーを溜め込んでいるのか分からない。

このパワーと輝きが、きっと国を支え、照らすのだろう。
私は静かに、そう感じた。

近いうちに、福島の沿岸でも歩いてみようか。
そんなことを考えていたら、なぜだか腹が減った。
よし、何かうまいものでも食べに行こう。

……ちなみにS君は、私の親戚ではない。

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